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自走式駐車場とは、車両の運転者が自ら運転して駐車区画まで移動して入出庫するタイプの立体駐車場のことです。
施主や利用者にとってのメリットのほか、構造や設計、法制度など専門的な知識をまとめました。
機械式駐車場と比較すると、自走式駐車場は機械設備が少ないため、故障や機械トラブルへの対応などへの手間が少なく維持管理が容易です。そのため、中長期的にメンテナンスコストが抑えられる点が、施主にとっての大きなメリットです。
構造がシンプルで耐用年数も長く、必要に応じて拡張やレイアウト変更、増築にも対応可能です。また、利用者が自走で入出庫できるため、スムーズな回転が期待できますし、車幅や車高などの制限が機械式より緩いため、幅広い車種の車両に対応します。
そのほか、壁面緑化や太陽光発電設備などによりSDGsへの貢献もアピールできます。
自走式駐車場の建設には、機械式駐車場よりも広い敷地が必要になるため、建設費も一般に高くなる傾向です。
さらに、傾斜路やスロープの確保など、自走式駐車場の設計に対応できる敷地が必要になります。同じ敷地面積で比べると、機械式より収容台数が少なくなる場合があります。
自走式駐車場は、機械式駐車場のように入出庫の際の待ち時間が少なく、車に乗ったまま出入り可能で、駐車区画での乗り降りや荷物の出し入れがしやすいことは、利用者にとっての大きなメリットです。
車幅や車高などの制限が機械式より緩いため、幅広い車種の車両が利用可能。大規模施設に併設された自走式駐車場でも自分のペースで駐車でき、駐車場所を示すサインや歩行者動線が分かりやすく示されていれば駐車区画をスムーズに見つけられます。
また、機械操作がないことや開放的な構造であることは利用者の安心感につながります。
自走式駐車場は、「自分で入出庫する」という特徴がユーザーにとってのデメリットになることもあります。自ら空き区画を探す必要があり、駐車区画によっては階段やエレベーターなど目的地まで歩く距離が長くなってしまうことも。スロープを上り下りすることや、傾斜した区画への駐車を負担に感じる場合も想定されます。
また、最上階に駐車する場合は屋根がないため乗り降りの際に雨に降られることがあり、階段やエレベーターの移動に時間がかかってしまうこともあります。
日本初の自走式駐車場は、1929年(昭和4年)に東京・丸の内に開業した6階建ての「東京ガラーヂ」だとされています(※)。太平洋戦争後、高度経済成長とモータリゼーションを経て、土地の狭い日本では機械式駐車場が先に普及しました。
1990年代以降、自走式駐車場はメンテナンスコストが比較的安い一方で安全性が高い上、災害時には避難所などとして活用できることなどが評価されて大規模施設に附設されるようになり、徐々に主流になっていきました。海外でも、20世紀後半からは自走式駐車場が主流となっています。
高度経済成長による人口の都市集中と、1960年代以降のモータリゼーションの進展による自動車普及率の上昇により、平面駐車場では都市部の駐車場需要に対応できない状態となりました。そこで、まず狭い土地でも設置できる機械式駐車場がまず注目されましたが、維持管理コストが高く、入出庫の利便性が低いことから、次第に自走式駐車場が増加。近年、大規模なマンションや商業施設が多く建設されるようになると共に、併設される自走式駐車場も多層化・大型化が進んでいます。
自走式駐車場は、単なる駐車スペースではなく、都市インフラの一部として大きな役割を果たすようになったのです。
モータリゼーションが進むと共に、特に都市部での駐車場不足が深刻化。1957年に駐車場法が制定され、駐車場整備の重要性が認識されるようになりましたが、当初は機械式駐車場が多く建設されました。近年の駐車場整備の主流が自走式駐車場となっている背景には、国土交通省が自走式駐車場と建築基準法上の建築物であるとの見解を示し、同法の安全基準を満たすことの重要性が認識されたことが挙げられます。
また、都市計画においてもライフサイクルコストが重視される中で、維持管理コストが比較的低い自走式駐車場が選ばれるようになったことも追い風になりました。
自走式駐車場の費用は、建設費のほか維持費、運用コストなどがあります。構造方式によっても変わり、コストダウンのためにはさまざまな工夫が必要。大きな投資が必要な場合もあり、解体費まで含めた長期的なライフタイムコストを把握しておくべきです。
自走式駐車場の構造方式には、ラーメン式やブレース式などの種類があり、耐久性やメンテナンスコストも変わります。材料や工法によってレイアウトや工期が左右されます。地震力や風荷重も考慮し、十分な強度と耐力を確保しなければなりません。
自走式駐車場の設計では、1フロア当たりの収容台数と安全性のバランスなどを考えながらレイアウトを決め、適切な構造方式を選択します。構造計算により十分な耐震性を確保できる構造方式を選択。建築基準法や消防法などの規制にも注意が必要です。
自走式駐車場の防水は、建物の耐久性を高めて維持管理コストを下げるもので、資産価値を守る重要な要素です。車両走行による荷重や温度、紫外線など特有の負荷がかかっており、ウレタン塗膜防水やシート防水などから適した工法を選択します。
自走式駐車場の勾配設計や使いやすさや耐久性に影響を及ぼします。建築基準法などで勾配の上限が定められており、高齢者や障害者への配慮からは緩やかな勾配が求められます。車路幅や天井高などと合わせ、快適な勾配を見極めます。
自走式駐車場の寸法は、安全面と利便性の両方に直結する重要な要素で、全体の広さから最適解を導く必要があります。駐車区画の寸法のほか、車路やスロープの幅は、両側駐車か片側駐車かなどの条件で変わります。法令やガイドラインにも従い決めていきます。
自走式駐車場を建築する際、関係者の間で情報を共有するために作る図面は、階ごとの駐車区画が分かる平面図、スロープ勾配がわかる断面図などがあり、それぞれに目的が違います。CADデータやBIMモデルを活用するのも効果的でしょう。
日本は台風や地震、火山など多くの災害リスクにさらされており、災害発生地域では自走式駐車場が避難場所になるなど大きな役割を担います。柱や梁などの補強や接続部の補強で耐震性を高め、排水ポンプや止水板などで雨水の流入を防ぎます。
建物の安全性や防火性能などに関する建築基準法の規定は、自走式駐車場にも適用されます。耐震設計や風荷重・積雪荷重への対応についても規定されています。防火・耐火も厳しく規定され、防火地域にある場合は耐火建築物でなければなりません。
建築基準法の規定や国土交通省の見解により、多くの自走式駐車場は「建築物」として取り扱われます。建設の際には多くの手続きが必要となるほか、耐震性や安全性の基準をクリアしなければなりません。構造によって一部の規制が緩和されることもあります。
建築基準法に基づき、耐火建築物に相当する耐火性能があるとして国土交通大臣の認定を受けた自走式駐車場は、耐火被覆を施す必要がないなど多くのメリットを享受できます。地方自治体や業界団体などもさまざまな「認定」を出しています。
自走式駐車場は、太陽光発電などよるクリーンエネルギーへの移行や気候変動対策推進、駐車管理システム導入による技術革新などの面でSDGsの達成に貢献。車を停める場所というだけでなく、都市の持続可能性を後押しすることが求められています。
マンション駐車場を自走式駐車場に建て替えることで、安全性や利便性の向上と共に、維持管理コストの削減が見込めます。設備診断を受けるなどして現状を把握し、アンケートで住民の意見を集めます。説明会も複数回開き、建て替えに向けた合意を形成します。
自走式駐車場のファサードは都市景観に大きな影響を与え、地域のブランディングにもつながるもので、周辺との統一感や差別化を狙いつつ魅力的な演出を狙います。壁面緑化やルーバー、デジタルサイネージなどを活用、換気・排煙にも配慮が必要です。
綿半ソリューションズ株式会社は、自走式立体駐車場の設計・施工を専門とする専業メーカーです。
全国に多数の施工実績を持ち、用途や敷地条件に応じた構造提案を行うほか、設計段階からゼネコンや設計事務所と連携し、図面・法規・運用面まで一貫して対応。
6層7段構造において国土交通大臣認定(一般認定)を2016年12月、業界で初めて取得※するなど、大規模・高層対応の先駆的な実績も有しています。
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