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建築基準法は、対象となる「建築物」「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)」と定義しています。屋根や壁のないごく小規模の自走式駐車場であれば「工作物」の扱いになる可能性は残っていますが、国は1層2階の自走式駐車場も「建築物」とする見解を示しています。
多層階や大規模の自走式駐車場はほぼ「建築物」に該当し、建築基準法上の規制を受けることになります。
建物の安全性や防火性能などに関する建築基準法の規定は、自走式駐車場にも適用されます。
主要構造部は強度基準を満たす必要があり、衛生面では換気や排水の設備が求められます。防火地域では耐火建築物や準耐火建築物とする必要があるほか、騒音対策や日照確保など環境の確保も必要です。
大規模駐車場では震度6強以上の大きな地震でも倒壊しない耐震性や、利用者が安全・迅速に避難できる経路を確保することなどが求められます。
耐震設計の基礎となる地震力の算定方法は建築基準法施行令に規定されています。
建物の地上部分の各階の地震力は、「地域の危険度」「建物の揺れやすさ」「高さごとの揺れ方」「基本的な揺れの強さ」「その階より上の重さ」という五つの要素をかけ合わせて算出します。
構造計算の種類も建築基準法に規定され、建物の規模や高さに応じて、許容応力度計算や保有水平耐力計算などを用いて算出します。
自走式駐車場では、構造方式により地震力に対する考え方が違います。ラーメン式や連続傾床式は建物全体で地震力に耐えるのに対し、ブレース式はブレースが地震力を受け止めて建物全体の変形を抑制します。
建築基準法は、台風や大雪など自然現象による荷重に対応するための規定を設けています。
風荷重は、地域ごとに設定される基準風速に、建物の形状や高さなどを考慮した風速計数を掛けて算出した「設計用風速」を基に算出します。特殊な形状の建物や、周辺への影響が大きい建物は、風洞実験で正確な風荷重を算出することも認められています。
積雪に対しては、荷重計算の基となる垂直積雪量が豪雪地帯では大きな値を設定、建物の耐力強化が求められます。
建築基準法施行令は、一定規模以上の建物の建築前に地盤調査を実施するよう義務付け、不同沈下や変形にも耐えられる安全な基礎とするよう求めています。調査の結果、軟弱地盤だった場合は地盤改良が求められます。
大規模駐車場を建設する場合は基礎の選定が重要。比較的良好な地盤の場合は工期が短い直接基礎になりますが、軟弱地盤の場合は杭基礎とするのが適当です。こうした地盤情報の資料は、建築確認申請時に添付して提出することが求められています。
防火地域や準防火地域は、火災の危険防除を目的に、都市計画法で定められた「用途地域」の一種です。
いずれも建築物の構造や防火性能に関する規制が建築基準法を基に定められていて、防火地域では原則として耐火建築物とする必要があり、外壁は耐火構造とし、柱や梁も耐火被覆を施すなどの措置が求められます。
準防火地域でも、4階建て以上または延べ面積1,500㎡を超える場合は耐火建築物でなければいけません。オープン型駐車場のように外周開放率が高い場合でも、この規制は原則的には緩和されません。
建築基準法は、火災発生時の延焼を最小限にするため、一定の建築物には建物内を分ける防火区画の設置を義務付けています。
商業施設やオフィスビルに駐車場が併設されているような複合ビルの場合は、「異種用途区画」と呼ばれる防火区画を原則設置しなければなりません。区画を分けるために、耐火構造の壁や防火シャッターなどの特定防火設備を使います。
防火地域や準防火地域にある複合ビルの場合は、駐車場も耐火構造や準耐火構造にする必要があります。
一定規模以上の駐車場は、消防法で消火器の設置が義務付けられており、設置個数や種類は、駐車場の面積や規模で細かく定められています。大規模駐車場や、商業施設・オフィスとの複合建築物で一定規模以上の場合はスプリンクラーを設置しなければなりません。
排煙設備や換気装置も設置が義務化されている場合があります。
建築基準法施行令は、避難経路の確保を目的に、屋内の歩行者用通路の幅が規定されています。
幅は建物の用途や規模により違い、駐車場の場合は避難方向や階数、面積などに応じて75cm以上または90cm以上の有効幅が求められます。
避難の上で大事な通路は、より広い通路幅が求められる場合もあります。歩行者と車両が混在する通路では、歩行者の安全を守るため、歩行者用通路と車路を明確に分離する必要があります。
料金を徴収する一定面積以上の公共用駐車場は、バリアフリー法上の基準に適合させなければなりません。
車椅子使用者用の駐車区画を駐車台数に応じて一定数設置し、段差がなく幅の広いバリアフリールートを確保する必要があります。
勾配は12分の1を超えないようにするのが基準で、原則として通路の両側に手すりを設置しなければなりません。エレベーターについても、サイズや操作盤の高さなどが詳細に規定されています。
建築基準法は、一定規模以上の駐車場に対し、緊急時も避難誘導を円滑にするための非常用照明の設置を義務付けていて、床面で1ルクス以上、蛍光灯やLED照明の場合は2ルクス以上が求められています。
消防法は、誘導灯や誘導標識の設置も義務としており、避難口誘導灯や通路誘導灯は緑色の灯火を使い、停電に備えて非常電源を備えていなければなりません。
自走式駐車場の面積のうち5分の1を限度として、容積率算定時の延べ面積に算入されない特例が、建築基準法施行令に規定されています。さらに、自治体によっては、地域活性化策として特定エリアでの不算入率を上げたり、環境配慮型駐車場を優遇したりしている例があります。
また、外壁のない部分が連続して4m以上あるなどの条件を満たした開放型駐車場も、同様に面積の5分の1までを不算入とする特例があります。
敷地面積に対する建築面積の割合を示す建蔽率は、建築基準法で用途地域ごとに上限が定められていて、自走式駐車場のような建築物にも適用されます。ただし、一定の条件を満たした開放型駐車場については、柱や屋根の先端から1mまでの部分を建築面積から除外できるという特例があります。
商業施設やマンションの敷地と一体化している駐車場の場合は、敷地内のすべての建築物の建築面積を合計して建蔽率を算出する点に注意が必要です。
建築基準法は、用途地域ごとに建築物の高さの上限を定めていて、自走式駐車場も原則としてこの上限が適用され、道路や隣地境界線から引いた斜線を超えて建物を建てられないという斜線制限についても同様です。ただし、開放的な構造の駐車場の場合、斜線制限の判断の際に構造物とみなされる範囲が限定的になることがあります。
日影規制についても原則として対象となりますが、駐車場の構造や配置によっては、近隣住民への影響が少ないと判断されて規制対象外となる場合もあります。
都市部では、良好な都市環境づくりや地域特性への配慮を目的に、建築基準法に加え、独自の駐車場整備条例や景観条例が制定されている自治体が少なくありません。
駐車場整備条例には、商業施設やオフィスに建築基準法よりも多い台数の駐車場を設置する義務規定を設けたり、車椅子利用者用の駐車区画の数などについてバリアフリー法よりも厳しい基準を設けたりする例があります。景観条例でも、外観や緑化率が規制されることがあります。
一部の自治体では、外周開放率などの要件を満たした開放型駐車場を優遇する規定を条例に設けているケースがあります。
自然換気が十分に見込める場合は国が定める換気基準を緩和したり、換気設備の設置を免除したりする場合も。容積率の算定に関しても、駐車場部分の不算入限度を国の規定よりも大きくしている自治体があります。
こうした条例のメリットを享受するには、当初の設計段階から安全性も含めて留意する必要があります。
駐車場の整備に関し、独自の補助金や認定制度を設けている自治体は多くあります。一定の環境性能を満たす駐車場を「エコ駐車場」と認定して税制上の優遇をしたり、容積率や建蔽率の緩和措置を適用している例があります。
また一部の自治体では、専用区画を法定台数より多く設置するなど高齢者や障害者が利用しやすいよう整備された「バリアフリー駐車場」に対して費用の一部を補助するなどの制度を設けています。
建築確認申請は、一般的に以下の流れで進みます。
屋根・柱・壁の有無によって異なります。
原則として「屋根+柱」または「屋根+壁」がある場合は建築物とみなされ、建築基準法の適用対象になります。
一方、屋根がない簡易な構造であれば「工作物」扱いとなる可能性もありますが、多層階・大規模の場合は屋根がなくても建築物扱いとなるケースもあるため、事前に行政と協議が必要です。
外周開放率が一定以上(例:外壁長の50%以上開放など)であることが主な条件です。
また、換気や排煙などの安全性が確保されていること、主要構造部が不燃材料であることなど、複数の条件を満たす必要があります。
条例や地域によって要件は異なるため、設計初期に管轄自治体の条例・運用基準を確認することが重要です。
主に、以下のポイントに注意が必要です。
一般に、屋根・柱があり、一定規模(高さ・延床面積)を超える構造であればほぼ建築物扱いとなり、建築確認申請が必要です。ただし、仮設建築物扱いや簡易な平面式駐車場で屋根がないケースなどでは、確認申請が不要となる例もあります。
グレーゾーンも多いため、計画初期に行政庁や指定確認検査機関への事前協議が不可欠です。
綿半ソリューションズ株式会社は、自走式立体駐車場の設計・施工を専門とする専業メーカーです。
全国に多数の施工実績を持ち、用途や敷地条件に応じた構造提案を行うほか、設計段階からゼネコンや設計事務所と連携し、図面・法規・運用面まで一貫して対応。
6層7段構造において国土交通大臣認定(一般認定)を2016年12月、業界で初めて取得※するなど、大規模・高層対応の先駆的な実績も有しています。
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